Outlook

レース展望

原田 幸哉

3779(長崎)

年齢を超越した精度
原田幸哉の計算式

「第2期黄金期」が訪れているのだろうか。昨年は4月下関マスターズCで優勝すると、8月には旧地元の蒲郡でボートレース真夏の祭典・SGメモリアルを勝った。09年から遠ざかっていたSG優勝だった。さらに今年は、5月宮島オールスターで優勝して賞金トップに。暮れの地元・大村グランプリ出場は当確だろう。

特筆すべきは、優勝したSG2つとも「質の高いスタート」が決め手になった点だ。年齢を重ねるにつれて、動体視力を含めて反射神経が衰えるものだが、原田にそんな様子はない。蒲郡メモリアルはインからコンマ04のトップスタートからの逃げ、宮島オールスターは3コースからコンマ11のトップスタートでの捲り差しで優勝している。

ボートレーサーになりたいと思った子供の頃、原田は友達と「スタートごっこ」をして遊んでいたと言う。信号機を大時計に見立てて、次の信号が青になるタイミングを測って自転車を漕いでいた。その頃から磨いたスタートのやり方が、ミクロの計算式まで昇華したのか。全速でスリット先陣を切る原田の姿が、オーシャンCでも見られそうだ。

白井 英治

3897(山口)

白井英治だけが知る
限界の先にある世界

「レース場に入ったら白井は何を食べているか、知っているか?」と聞かれたことがある。ファン手帳では白井の身長は173cm、体重は55kgだが、SGで走る時は限界の52kgまで絞ってくる。

夏場の6日間シリーズは体力の消耗が激しい。体重を絞るといっても、最低限のカロリーは必要である。聞けば、紙パックに入ったコーヒー牛乳だけでシリーズを乗り切るとのことだった。フラフラになって当たり前の状況である。

白井の凄いのは、そうした減量をしていても集中力を切らさないことだ。SG初優勝の14年若松メモリアル優勝戦はコンマ00のタッチスタート、2度目の18年徳山グラチャンはコンマ07である。加えてメモリアルは悲願のSG初制覇、グラチャンは64年ぶりの地元・徳山のSG開催と、大きなプレッシャーが懸かるレースだった。

タッチのスタートが見えているのか疑問に思ったが、白井はサラリと「0台に入っている確信があるから」。集中力を切らしていないからこそ出る言葉である。落とせるものを全て削ぎ落とした気力が見せる世界、それを白井は知っている。

石野 貴之

4168(大阪)

モーター抽選を克服した
NEW・石野貴之

選手はニックネームがついたら本物だと言われる。石野のニックネームは「石野信用金庫」と「SGハンター」だ。石野のSG優勝は9回、GⅠ優勝も9回ある。競艇がボートレースと呼ばれるようになり、14年5月にメダル表彰制度「GRANDE5」が設けられた。現在、石野はメダル獲得数3個でトップを走っている。

グランプリでも優勝している石野だが、SGを勝つ時には常に実績機の存在があった。勝つ時は圧勝するから、インパクトも強烈だ。一方、4期連続で6点勝率と低迷し、A1級継続が危ぶまれた時もあった。昨年の住之江・高松宮記念ではまさかの未勝利に終わり、“石野の舟券はモーター次第”という評価が定着していた。

ところが、だ。2連率29.4%のモーターで優勝した。今年6月の住之江周年である。序盤は「道中の回転がズレている」「スタートの起こしが気になる」と機力通りのコメントだったが、準優日には「足は言うことない」というレベルに仕上げた。今までの石野とは、明らかに違う。新境地を開いたと言って良いだろう。

オーシャンカップは過去5回優出し、3回優勝している好相性のSGだ。NEW・石野は、必ず結果を出す。

西山 貴浩

4371(福岡)

陸上も水面も制す!
進化した西山貴浩を見よ

巧みな話術とパフォーマンスで知られる西山は、開会式から裏切らない。コロナ禍で実力を発揮できなかったが、5月宮島オールスターの開会式では久々の仮装、それも着ぐるみからの登場と進化していた。

レースも進化している。05年11月にデビューした時、先輩から「30走はフライングをするな」と言われた。その約束は守ったが、35走目でF。さらに期末の4月30日に2本目のFで、デビュー期の勝率は3.34しかなかった。

「フライングをしなくても勝つには、ターンで勝つしかない」と、現在ボートレース養成所の教官をしている原田富士男と、先輩の川上剛がターンを教えた。フライング休みで収入のない西山を経済面でも支えた。その恩義に応え、道中追い上げる「粘りの西山」が誕生する。しかし、SGやGⅠレベルになると、バイプレーヤーでは勝てなかった。

再び、攻めるしかない。15年GPシリーズでSG初優出した頃は捲り勝ちがなかったが、今年は捲り1着数が差し・捲り差しの4倍もある。スタートも早くなった。「粘りの西山」から「攻めの西山」への変身である。

今回のオーシャンCでは、どんな進化を見せてくれるだろうか。

茅原 悠紀

4418(岡山)

オール赤で挑発する
茅原悠紀のスピード旋回

尼崎は21年から展示タイムを電子計測にした。さらに、オリジナル展示タイムも公表するようになった。展示タイムに加えて、展示航走の一周、直線、まわり足タイムも表示される。1番時計は赤色で表示されるが、茅原は全ての項目に赤色がつくことが多い。他の選手では滅多に見られない傾向だ。

茅原はアマチュアボート出身で養成所に入る前、高校生の頃からボートに乗っている。アマチュアでは禁止されているモンキーターンをしても、茅原だけは叱られなかった。チームの関係者に聞くと、「この子はボートの選手になるので、今からモンキーターンの練習をさせています」と返ってきた。

選手になってからの練習でも、先輩から「ターンマークを外しすぎていないか」と問われて、「大丈夫です。外から外に回って抜き去る練習です」と答えていた。茅原のスピードターンは、いつしか「異次元ターン」と呼ばれるようになった。

展示でも、本番でも、いつも最先端のターンに挑戦しているので、茅原の展示タイムでオール赤になる。「俺のスピードについて来れるか」と言っているようだ。

磯部 誠

4586(愛知)

ボート界きっての分析官
磯部誠のコメントは必見

選手インタビューをしている取材担当者から「磯部は言葉を探して話してくれる」と聞いたことがある。確かに優勝戦のインタビューを聞いていると、他の選手よりも話す時間が長い。モーターの仕上がりでも、出足、伸びに加えて、その中間ゾーンについての話もする。自分の力を理解したうえで、相手との力関係を相対的にとらえて言葉にしてくれる。伸びが強いと思えば捲りを想定した作戦、弱ければ差す展開を模索する。磯部本人だけでなく、舟券作戦にも欠かせない情報だ。ここまで丁寧に考え、言葉にできる選手は少ない。

客観的に物を見る磯部は、常に冷静だ。今年の常滑・東海地区選で優勝した時は、1号艇のフライングにつられなかった。4月びわこの優勝戦でも、4号艇のフライングにつられず優勝している。ともに決まり手は「恵まれ」になっているが、恵まれたわけではない。磯部の言葉を借りれば「スタートに集中して行った」結果である。

オーシャンカップは3年連続3回目の出場になる。過去2年は準優まで進出した。知性派らしい、深い読みで準優の壁に挑戦する。